中国の公的所有企業についての民営化(より正確には会社制度の導入と国有資本の撤退)は90年代後半から沿岸地域の企業を皮切りに進みつつある。一方、本研究の課題である内陸地域では、上記のような民営化過程は沿岸地域よりも遅く、2000年代に入ってから着手された。着手が遅れた主な理由としては、沿岸地域と異なり内陸地域では国有企業が地域の生産力の主要部分を占め民間の資本蓄積が進まなかったこと、この地域では重化学工業企業が高い比率を占め、一社あたりの資産額が相対的に大きいことなどが挙げられる。このような条件下で着手された内陸企業の民営化はどのような方法で行われ、その結果どのような資本所有構成が形成され、企業統治にどのような影響を与えつつあるかを明らかにすることが本年度の課題であった。 課題については、書誌的資料・統計資料の収集、分析、及び現地調査を行うことにより解明作業を進めた。その結果、内陸地域のケースでは、集団としての従業員が新しい資本所有主体として(行政部門により)意識的に形成されつつあること、ただしその従業員集団の資本所有主体としての機能を有効に発揮させるための制度整備については模索段階にあることを始めとしたいくつかの点を暫定的にではあるが明らかにすることができた。
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