研究概要 |
本研究課題の目標である「日本の租税体系の厚生評価」をするための手段である税収関数の性質,特に,税収の税率に関する感応度を推定するためのデータ入力や推定のための準備作業をほぼ終えることができた。膨大な数の予備的な推定作業の後で,統計的に良好ないくつかの感応度が得られている。さらに,感応度から厚生評価をどのように導くべきかという,理論上の手続きに関しても完成を見ている。現在は,理論と実際に得られている推定値の間の整合性を追求している段階である。 理論研究での,特筆すべき1つの成果は,実効税率の推定に関する方法の確立がある。たとえば,現在の消費税には非課税措置がある。これらがあるために,純粋な付加価値税ならば達成できる「表面税率と実効税率の一致」が成り立たない。したがって,実効税率が得られるならば,現在の税制がどの部門に歪みを与えているかが明白になる。その意味で重要な成果である。 さらにいま1つの成果は,消費税がもたらす価格効果を処理するとき,産業連関表における部門を分割集計する作業が必要となる。そのとき,分割や集計の対象とならない部門の価格は以前の値に止まりうるか,が一つの焦点となる。このような価格の頑健性を保つための基礎となる処理法を確定した。現在はそれをよりプラクティカルなものにするための作業を行っている。 上述のものに付け加えて,研究課題の周辺領域においていくつかの成果を得た。一つは「租税競争理論」の限界についての成果である。いま一つは「公共財の自発的供給」に関する中立性命題に関する成果である。前者は藤井由枝氏との共同研究であり,2002年度の日本経済学会春期大会(小樽商科大学)にて報告された。後者は山本真一氏との共同研究で,2003年度の日本経済学会春期大会(大分大学)にて報告予定である。
|