本研究は、システム・エンジニアの継続的学習行動の規定要因に関するものである。具体的には、(1)職務環境要因の影響を外生変数として統計的にコントロールした上で、既存研究が示唆するところの「性格特性(誠実性・解放性)→継続的学習」という因果モデル(直接効果モデル)を検証し、(2)次に当図式の中に'内発的動機付け'を媒介変数として組み入れ、「性格特性→内発的動機付け→継続的学習」という新たな因果モデル(間接効果モデル)を構築し、その妥当性を検証した。 まず、直接効果モデルを検証した結果、既存研究を支持する結果が得られた。即ち、誠実性と解放性の2つの性格特性は学習行動とプラスに連関していることが見出された。 次に、内発的動機付けを媒介変数として投入すると、既存研究で見出されてきた直接効果(性格特性→学習行動)がもはや統計的に有意ではなくなった。そして、性格特性の学習行動に対する効果は内発的動機付けによってフルに媒介されていることが明らかとなった。換言すると、既存研究が支持してきた直接効果モデルが棄却され、本研究によって提唱された間接効果モデルが採択される結果となった。これより、以下のことが示唆される。即ち、日々変容する職務達成要件に適応するために積極的に継続学習するシステム・エンジニアを保有するためには、組織は単に個人の性格特性に着目し、誠実性と解放性の高い者を採用・配置すればよいということではない。それらの性格特性が内発動機のソースとして機能し得るように職務を設計する必要があろう。内発的に動機付けられる性格傾向を有する社員をどれだけ採用・配置しても、仕事そのものの内容が充実していなければ社員は内発的に動機付けられることはなく、したがって継続的学習行動も生起しないと思われる。
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