研究概要 |
本課題研究は,無限次元半単純リー代数(群)や量子群に対して,有限次元群の場合の既約許容表現すなわちハリシュ-チャンドラ加群に相当する新しい表現の族を構成・分類することを主な目的としている.今年度は,無限次元リー代数のヴェイユ型表現(フォック模型)に関するチータ対応の拡張を検討した.さらに,カペリ恒等式(重複度自由作用)や微分作用素環の理論との関連を探った.以下にその研究実績を述べる. 研究代表者山下は,管タイプのエルミート型単純リー代数に付随した概均質ベクトル空間について,基本相対不変式に対応して無限次元リー代数のヴェイユ型ハリシュ-チャンドラ加群とチータ対応が得られること(Rubenthaler, 1992)に注目し,その構造を詳細に研究した.さらに,(ボレル部分代数の作用に関する)より低次の相対不変式に対応した新たな表現の構成を検討した.現時点では最終的な結論は得られていないが,この過程をとおしてテンソル積表現のPRV-成分への射影作用素の核空間について,無限次元表現のべき零不変量を特定するために鍵となる,重要な知見が得られた(現在論文執筆中).また,研究分担者和地は,これまでに得られている古典型に加えて,E6型とE7型においてスカラー型一般ヴァーマ加群上のカペリ型の恒等式を得た.この成果は無限次元リー代数のヴェイユ型表現の研究に直接結びつくはずであり,その検討をはじめている. 一方,無限次元リー代数の表現作用素の研究に資するため,研究分担者齋藤は,半群環上の微分作用素環に付随する次数環の構造の研究を実施した.本補助金によるTravesと研究連絡にもとづく共同研究で,半群がscoredであるときも対応する次数環が有限生成代数であることを示した.研究分担者澁川は,量子群の表現と深く関わる(楕円関数を用いて記述される)ヤン・バクスター方程式の解について研究を進めた.
|