研究概要 |
本課題研究は,無限次元半単純リー代数(群)や量子群に対して,有限次元群の場合の既約許容表現,すなわちハリシュ-チャンドラ加群に相当する新しい表現の族を構成・分類するために,「代数的量子化」の理論が無限次元の場合にいかに展開できるか,その可能性を探ること主目標としている.今年度は,代数的ディラク作用素およびディラクコホモロジーを用いた共役類の量子化と表現の構成の研究を行った.さらに,カペリ恒等式(重複度自由作用)の研究と深く繋がる普遍包絡代数の中心元の研究をすすめた. 研究代表者山下は,Jing-Song Huang(香港科技大)およびPavle Pandzic (Zagreb大)によるディラク作用素の研究に注目し,本科学研究費でHuang氏を招聘して,ヴェイユ表現に付随した無限次元ベクトル束上に働くディラク型微分作用素の核及びコホモロジー表現の検討を詳細に行った.現時点は諸例研究の段階にとどまっているが,軌道のシンプレクティック構造から自然に定まるディラク作用素の研究が,本課題研究において重要な成果に結びつく可能性を示唆する新知見を得た.研究分担者和地は,直交リー環の普遍包絡代数の中心元の表示に関する基本的結果を得た.この成果は無限次元リー代数のヴェイユ型表現をとおした表現のテータ・リフトの研究にも結びつくはずである. なお,無限次元リー代数の表現作用素の研究に資するため,研究分担者齋藤は,半群環上の微分作用素環に付随する次数環の構造の研究を継続している.また,研究分担者澁川は,A型超リー代数に付随するボルツマンウェイトの研究を行った.
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