研究概要 |
昨年度は、現在知られている可換な場合のクリスタリンコホモロジーをシンプソンの方法で,高次のスタックを用いて表現しようと試みた.今年度は正標数のベクトル層の理論のより完全な整備を目標として,ロビーによる古典的な被約幕の理論との関係を研究してきた.それについては奈良女子大の武田氏と数回にわたり議論を重ね、かなりの部分が正標数にも拡張できることがわかった一方,整数環上の大域的サイトの難しさから幾つかの問題点も見えてきた。 また,トーエンにより,高次のスタックを扱うのに必ずしもシンプソンの意味の高次元カテゴリーを用いなくてもすむようになってきたが、昨年度に引き続き、この方面の研究は海外で急速に進展しており,その成果の理解と研究にかなりの時間を費やした.国内ではこの方面の研究はほとんどなされていないが,ホモトピー、K理論のエキスパートである京都大学の原田雅名氏がこの方面の研究に目を向けられたので、数回にわたり議論を重ね、また解説の講演をお願いするなどして理解が進んだ。啓蒙的な講演も何回か行った。また、今年に入ってクリスタリンホモトピーの構成に成功した海外の研究者が現れたので、現在はその理論の研究に打ち込んでいる。このようにこの分野の研究は海外で活発に動いているので、その理論の紹介を目的とした来年度の研究会を計画している。
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