研究概要 |
非因果的システム、あるいは情報先取りやフィードバックのある確率的システム、の研究は大きく分ければ、(1)道具としての因果的・非因果的確率解析の研究、(2)非因果的環境におけるシステムの数理モデルの構築、(3)モデルの解析、特に統計的性質の数値解析の三つの方面から着手されなければならない。(1),(2)は非因果的確率解析理論の展開と応用に、(3)はそうした確率モデルの数値解析(確率数値解析)理論研究と計算手法の開発に帰着する。 計画初年度に当たる平成14年度は(1),(2)のそれぞれの課題について準備的研究を行った、すなわち;(1)については小川が1979年に導入した非因果的確率解析理論の整備を行った。応用としてそれ自身は因果的現象でありながら、解析モデルでは非因果性が直接的に現れるブラウン粒子方程式(確率偏微分方程式)の研究を行った。中でも数理物理学におけるBurgers'方程式を例に取りこれに対応する非線形ブラウン粒子方程式の初期値問題を調べ、解の存在と一意性に関する結果を得た。 (2)については、フィードバックをゆるした環境下ではBlack-Sholesモデルがどのように修正されるべきかという問題をM. Mancino氏(Firenze大)と共に考察し、えられた非線形モデルについて解の存在・一意性に関する基本的な結果を得た。この共同研究の結果は国際研究会(「数理ファイナンスと確率過程」於ける立命館大、2003年3月)にて発表する予定である。
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