研究概要 |
有限グラフGがパーフェクトグラフであるとは,Gの任意の誘導部分グラフHについてHの彩色数とHに含まれる完全グラフの最大位数が一致するときに言う.当該萌芽研究においては,有限グラフに自然な方法でトーリックイデアルを付随させ,そのイニシャルイデアルの代数と幾何を駆使することで,懸案の強パーフェクトグラフ予想「有限グラフG及びその補グラフが長さが5以上の奇サイクルを誘導部分グラフとして含まないならば,Gはパーフェクトグラフである」の肯定的解決に挑戦するための基盤を構築する.いま,有限グラフGの頂点集合を{1,...,n}としGに含まれる完全グラフKにR^nの(0,1)-ベクトル\delta(K)=\sum_{i\in V(K)}e_iを対応させる.但し,V(K)はKの頂点集合,e_iはR^nの単位座標ベクトルである.このとき,有限集合{\delta(K);KはGに含まれる完全グラフ}の凸閉包である(0,1)-凸多面体P_GとそのトーリックイデアルI_Gを考察する.当該年度はI_Gのイニシャルイデアルin_{<}(I_G)の代数的な振る舞いを解析するための基礎研究を展開した.具体的には,任意の逆辞書式順序<についてin_{<}(I_G)がsquorefreeな単項式で生成されるための条件を探究した.当該萌芽研究における作業仮説は「任意の逆辞書式順序<についてイニシャルイデアルin_{<}(I_G)がsquarefreeとなるためにはGがパーフェクトグラフであることが必要十分である」という予想である.我々はその予想の十分性を証明することに成功し,加えてin_{<}(I-G)が2次単項式で生成される有限グラフの類を発見することができ,次年度以降の研究を遂行するための準備ができた.
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