研究概要 |
解が存在しない微分方程式の問題として,解析的な係数を持つ楕円型偏微分方程式の初期値問題をとりあげた.この方程式では,初期条件が解析的でないときに解が存在しないことが数学的に知られている.そこで,数値シミュレーション用のテスト問題として,初期条件にパラメータを一つ入れて,そのパラメータの値によって解が存在非存在がコントロールできるものを考案した.このテスト問題に対して,差分法による数値シミュレーションと我々が開発した無限数値精度シミュレーションを適用し比較した.差分法は,解が存在するときでさえ,数値シミュレーションがうまくいったりいかなかったりして,信頼性に乏しいことがわかった.一方,無限精度数値シミュレーションでは,解が存在するときには数値解が収束し,存在しないときには数値解も収束しないという,解の存在非存在に対応する結果が得られた.無限精度数値シミュレーションが非常に信頼できる手法であることが確認できた.この無限精度数値シミュレーションでは莫大なメモリ空間と計算時間を必要とする.そこで,備品で購入した高性能パソコンを高速ネットワーク接続した計算機クラスターを構築した.この計算機クラスターにおいてPVMによる並列計算を行ったところ,メモリ使用量が14GBにもなるような大規模計算をCPUの個数に近い並列度で高速計算することに成功した.これによって,無限精度数値シミュレーションの大規模並列計算法を確立した.
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