当初の目的のために、まず、1次元径数ではあるが、R^1_+上の加法過程(独立増分過程)に関する確率積分の理論を厳密に構築する必要があるとの認識を持ち、そのためにまず佐藤は、どのような加法過程に対して積分が定義できるかを調べた。その結果、その加法過程のレヴィ・ヒンチン表現の位置パラメータが有限区間で有界変動であればよいということを見い出した。そこに有界変動という概念が登場したので、多次元径数関数の有界変動という新しい数学概念を考える必要が出てきたが、これは2年目の課題となる。それらが、径数空間の図形の性質にどう依存するかは、当初の目的に沿ったテーマとなる。次に前島と佐藤は、1次元径数の範囲でそのように定義された確率積分を使って、半レヴィ過程と半自己相似独立増分過程と半定常オルンシュタイン・ウーレンベック型過程の関係を明らかにした。これらは、いずれも最近の、Lacobsen-Yorの、R^n_+上のマルチ自己相似マルコフ過程の議論を錐径数の場合に拡張するための出発点になる。一方佐藤は、デンマークのPedersenと共同で、多次元径数レヴィ過程について現時点までに知られていることがらを報告書としてまとめ、さらに一部新しい見地を得た。すなわち、前島がRosinskiと共同で研究した多次元タイプG確率変数に関することがらで、少し表現の違うBardorff-NielsenとPerez-AbreuのタイプGが、M^+_<d×d>径数のたたみこみ半群の従属操作を使って特徴づけられることを示した。以上のことはいずれも発表準備中である。
|