研究概要 |
佐藤超函数の枠組みで擬微分作用素p(x,D)を考える(正確には、p(x,D)を解析汎函数の空間を佐藤超函数の空間に写す作用素と考える)。そのとき、与えられた有界領域Ωにおいて、転置作用素^tp(x,D)に対する解析性の伝播についての仮定の下で、p(x,D)のΩにおける可解性、すなわち、与えられたΩ上の佐藤超函数f(∈B(Ω))に対して、p(x,D)u=f in Ωを満たす解析汎函数uが存在することを示した。この結果は、p(x,D)が微分作用素である場合に、Cordaro-Trepreauによって既に証明されていたが、彼らの方法を適用して結果を擬微分作用素に拡張することは、難しいと考えられていた。私が以前に"Classical Microlocal Analysis in the Space of Hyperfunctions, Springer Lecture Notes in Math.vol.1737"において導入したcut-off作用素(cut-off函数をシンボルに持つ擬微分作用素)を用いることにより、彼らの証明法が適用できることが分かり、結果を擬微分作用素の場合に拡張した。また、応用として、河合-柏原によって導入されたマイクロ双曲型作用素に対する佐藤超函数の枠組みでの半大域的な可解性定理を得た。さらに前年度マイクロ函数の空間において、^tp(x,D)の解析的準楕円性よりp(x,D)の(超)局所可解性が導かれることを示したが、この結果も上述の形で半大域的可解性の定理に拡張できることを示した。 distributionの枠組みでは、対応する結果はHormander等によって既に与えられていて、(擬)微分方程式論においては基本的な定理の一つになっている。distributionの枠組みで用いられる手法を、我々の開発した方法によって、佐藤超函数の枠組みでの研究にも適用できることを示す一つの例を与えたことにもなっている。
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