研究概要 |
1960年代のG. Aronssonに始まるL^∞変分問題の研究は,R. Jensenにより粘性解の研究と結びつき,発展した。一方,1983年のP.-L. Lionsの研究により,線形退化楕円型方程式の劣解に関して,粘性解と超関数解の同等性が示された.この方向での研究は,石井,堤,福田,Juutinen, Lindqvist, Manfrediにより発展させられた.これらの研究を受けて,本研究において,アイコナール方程式に対する粘性解と殆ど到る所で方程式を満たす意味での解について研究を進め,次のような成果を得た.この研究はローマ大学のP. Loreti助教授との共同研究による.(1)ハミルトニヤンHが凸関数でないようなアイコナール方程式E(Du)=1を有界領域Ωで考える.ただし,H(p)>0(p≠0),Hは1次の正斉次関数であるとする.同時に,Hの凸包をH^^^と表し,アイコナール方程式H^^^(Du)=1を考える.Ω^^-上の連続関数uはu=0をΩの境界∂Ωで満たす,ΩでH^^^(Du)=1の粘性解であるとする.関数族Xは,υ=0を∂Ωで満たし,Ωの殆ど到る所でH(Dυ)【less than or equal】1を満たすΩ^^-上のリプシッツ連続関数υの全体とする.このとき,各点x∈Ωでu(x)は,{υ(x)|υ∈X}の上限に等しい.この事実は,変分法における緩和(relaxation)のL^∞版と見ることができるので,アイコナール方程式に対する緩和と呼ぶ.(2)更に,上記(1)のアイコナール方程式に対する緩和の結果から,つぎのL^∞変分法の漸近問題に関する結論が得られる.p→∞とするとき,υ∈Xに対する積分I_p(υ)≡∫_Ω[(1/p)H(Dυ(x))^p-υ(x)]dxの最小化を考える.このυ∈Xに関する下限をi_pと表す.υ_p∈XをI_p(υ_p)<i_p+1/pが成立するように選ぶとき,υ_p(x)→u(x)(Ω上で一様収束)が成り立つ.ただし,uはu(x)=0(x∈∂Ω)を満たすH^^^(Du)=1の粘性解である.以上が平成14年度における研究成果の概要である.
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