研究概要 |
これまでの研究を整理・検討し,国内・国外の各地の研究者との研究協力を得て,これまでの研究を発展させた.昨年度のアイコナール方程式に対する緩和現象の研究を進めて,比較的一般的なハミルトン・ヤコビ方程式について,殆ど到る所で方程式を満たすリプシッツ連続関数の族の各点ごとにおける上限が元の方程式を凸化した方程式の粘性解を与えることを証明した.この成果は,種々の変分問題に対する漸近問題,粘性解と超関数解との関係を明らかにする上で重要な役割を果たす筈である.p-ラプラス方程式の,p→∞とした極限における,解の漸近挙動について研究を進め,新しい知見を得た.p-ラプラス方程式の非斉次項をfと表す時,f=0の場合には,極限関数の満たすべき方程式(極限方程式)として,∞-ラプラス方程式が現れることは,G.Aronssonにより,また,fが定符号関数である時には,アイコナール方程式が極限方程式であることも,Kawohl, DiBenedetto, Bhattacharya, Manfredi等によって知られていたが,一般のfについては未だ知られていない.fの積分が0になる場合は,Monge-Kantorovichの質量移動の問題と係わり,興味深い.一般の場合について,完全な結果には到ってないが,1次元の場合と領域が球でfが動径の関数である場合について,一般的に極限関数を決定した。また。関連したL∞変分問題についてその解の一意性,本質的一意性,多重性について調べ,幾つかの結果を得た.これらの結果とハミルトン・ヤコビ方程式の緩和現象との関連性は今後の課題である.
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