X線光学における能動光学系の応用のためには、反射鏡、波面センサー、可変形状鏡、X線検出器それから、X線可視光分離フィルターを開発する必要がある。本研究では、X線可視光分離フィルターの開発が主である。それと供に、実験的に能動光学系の実現、裏面照射CCD内での電荷の振舞いを調べた。 X線可視光分離フィルターは、可視光の波面を壊さず反射すること、目標とする13.5nmの軟X線を充分透過させる事の両方を要求する。そのため、表面を0.2nm-rmsの粗さと4nm-rmsの形状誤差のドーナツ状のフレームを製作した。そこに150nm厚のZr泊を装着することで、試作品を完成させた。試作品はKEK-PFにてX線の透過率を測定し、13.5nmの軟X線では〜50%の透過率があることを確認した。 最も単純な能動光学系を実現させた。可視光レーザーとピンホールでほぼ理想的な球面波を作り、レンズにてほぼ平面波に変換する。その平面波を可変形状鏡で反射させ、再度レンズにて、球面波に戻す。その反射波を波面センサーで測定する。可変形状鏡で作成した波面を測定し、その波面を再現するように、波面センサーのデータを使い能動光学系として動作させた結果、3nm-rmsの精度で再現することが出来る事を確かめた。 検出器として使用する、裏面照射CCD内での電子の振る舞いを調べた。CCDは基板とエピタキシャル層で構成される。基盤中で生成した電荷は広がるとともに、電荷損失が生じる。エピタキシャル層で生成された電荷の電荷損失はほとんど無い。さらにエピタキシャル層は空乏層と中性領域から構成されるが、中性領域での電荷はある程度広がるが、空乏層での電荷はCCDのピクセルに比べて広がりははるかに小さいことがわかった。広がったイベントは、その広がりを利用して、CCDのピクセルよりも細かい位置決定が可能である。
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