研究課題
平成14年度は、高性能の超伝導トンネル接合素子(STJ)の作製のための基礎実験と、基盤検出型の直列接合素子の作製を行った。まず、理化学研究所内の超伝導接合素子(STJ)作製専用プロセスラインを用いてSTJ単素子の作製を行った。具体的には、サファイヤ基板上にNb/Al/A1Ox/Al/Nbという膜構造をスパッタ法で積層した。ただし、AlOx層はAl層の酸素雰囲気中での酸化により形成している。そして、同プロセスラインの露光装置、エッチング装置を用いて素子構造の形成を行った。このように作製した直列接合素子において、電流電圧特性を見ることによって素子の基本性能を評価した。その結果、従来よりトンネル障壁が薄く臨界電流密度が約1kA/cm^2のSTJ素子に対して、約1nA@0.2mVという漏れ電流を実現した。これによって、従来よりもはるかにトンネル確率が高く信号出力が大きい検出器の実現に向けて一歩進んだと考えている。その一方で、基板吸収型の硬X線検出素子の実現のためには、このような性能の高い素子を同時に多数作製する必要がある。そのような高い再現性の実現はまだ開発段階にあり、今後も素子作製方法の改良を進めて行く必要がある。具体的には、素子の縁からの漏れ電流を低減する陽極酸化法のプロセスの安定化がポイントとなると考えている。また、5・48MeVのα線のエネルギー検出において倉門らが明らかにしているように、素子本来の持つ高いエネルギー分解能を実現するには、光子の吸収位置に対する補正が極めて有効であり、今後、このような補正も視野に入れながら、平成15年の研究を順次進めて行く予定である。
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