本研究の主題は入射角度を変えたX線を検出器(特にX線CCD)に照射することで、その表面不感層の厚みを測定することにある。昨年度より予備実験を行ってきたが、本年度は研究室現有の冷却X線CCDカメラ装置とX線スペクトルメータを利用し、入射角度を変えてX線を照射する実験を行った。スペクトルメータを利用したことで、0.4keVから2keVの範囲でエネルギーの関数として連続的にX線検出効率の比(45度入射/0度入射)を求めることができた。このX線検出効率の比から算出した表面不感層の厚みはCCD素子の設計値に近いことを確認した。今回の測定に用いたCCDは表面照射型あったが、裏面照射型のCCDの実験を計画している。 一方、超小型軟X線源の作成については、密封線源を使う方法と高圧電源で電子を加速する方法の両面から検討を加えた。前者は十分な強度を確保するという面で、また、後者は安定した動作という面で技術的障壁がある。ところが、調査の過程で、パイロエレクトリック結晶を加熱冷却させることでX線を発生させる装置が最近発売されたという情報を得た。AMPTEK社が製品化したCOOL-Xがそれで、X線発生部分は高さ10mm直径15mmの円筒形で、我々の開発目標をはるかに凌駕するほど小型である。このX線発生装置は、時間的にX線強度が大きく変動するという欠点をもち、一般的な較正用途には大きな問題になる。しかし、X線CCDの斜入射較正法では、角度を変えたX線を同時に、CCDの別の場所に照射することでこの欠点をカバーできる。来年度早々に、この超小型X線発生装置を取得し実験に使用したい。
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