本研究の主題は入射角度を変えたX線を検出器に照射する(斜入射実験)ことで、その表面不感層の厚みを測定することにある。昨年度は表面照射型のX線CCD素子に0.4keVから2keVの範囲のエネルギーのX線を照射し、X線検出効率の比(45度入射/0度入射)から表面不感層の厚みを算出しCCD素子の設計値に近いことを確認した。本年度は不感層のより薄い裏面照射型CCD素子に対して斜入射実験を行った。表面不感層の厚みが薄いために0.27keVのX線の検出にも成功したが、X線がCCD内部で吸収される際に生じる電荷が複数のピクセルにわたって大きくひろがり、従来の解析方法でX線イベントを抽出することが難しいことがわかった。我々は、X線吸収量を測定する新たな指標PHSUMを考案して解析を行い、入射角度による検出効率の比から表面不感層の厚みを算出した。 同様に入射角度を変えたX線を薄膜ガス比例計数管に照射し、その検出効率の比からX線検出効率を測定する実験も行った。測定結果は過去に測定された薄膜単体のX線透過率と0.6keV以上で矛盾がない値を与えた。0.2-0.6keVでの測定結果は有意に異なるが、この食い違いはガス表面に不感層が存在すると仮定すると説明できることを明らかにした。このような不感層は、我々の考案した斜入射法では検出できるが、窓単体の透過率を測定するだけでは決して見つからないものである。斜入射法のメリットの一つを新たに認識できた。また、この方法で検出効率を測定した薄膜ガス比例計数管は、Astro-E2衛星搭載用のX線CCDカメラの較正実験のリファレンス検出器として利用した。 一方、超小型軟X線源としてはAMPTEK社が製品化したCOOL-Xを購入し、その基本特性を測定した。X線強度は十分に強く、これを試料にあてた蛍光X線を利用することで超小型較正装置が作成できる目途がたった。
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