・スピンクロスオーバー錯体の光励起定常状態の相転移の発見 -91Kにおいて、励起光強度の関数として、[Fe(ptz)_6](BF_4)_2の放射光X線粉末回折パターンを測定した。励起光強度が55mW以上になると、第二相が出現することを見出した。この相は光励起された高スピン・サイトが凝縮したものと考えられる。この成果は、JPSJのLetterとして、11月号に掲載される。 ・スピンクロスオーバー錯体において高スピン濃度のとびを観測 -[Fe(ptz)_6](BF_4)_2の高スピン濃度を、励起光強度の関数として測定した。励起光強度が閾値(臨界光強度)を超えると、高スピン濃度が不連続に増加した。これは、高スピン濃度が閾値を超えると、その間の相互作用により高スピン・サイトが凝集することを意味する。さらに、励起光強度と高スピン濃度との関係を、Isingモデルで再現した。論文を、PRBに投稿中である。 ・スピンクロスオーバー錯体の温度-光強度相図の作成 -Nafion-[Fe(Htrz)_3]膜において、各温度での臨界光強度を決定し、温度-光強度相図を作成した。光強度を強めると、高スピン・サイト凝集相が出現する。温度の増加に伴い、臨界光強度が増加する。40Kを超えると、高スピン・サイト凝集相が観測されなくなる。 ・シアノ錯体の光誘起準安定相と過冷却相の格子定数の決定 -シアノ錯体の光誘起準安定相と過冷却相の91Kでの格子定数を決定した。過冷却相の格子定数は、光誘起準安定相のものより長いことが明らかとなった。光誘起準安定相と過冷却相との違いを明らかにしたのは、始めてである。
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