研究課題/領域番号 |
14654052
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡邊 雅之 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助手 (20240525)
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研究分担者 |
田中 耕一郎 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90212034)
林 哲介 京都大学, 高等教育研究開発推進センター, 教授 (80026799)
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キーワード | チタン酸化物 / ポーラロン / 光学的性質 / 格子振動 / 誘導性 |
研究概要 |
近年、光物性の分野では、光照射により固体の結晶構造・電子構造を変化させて物性の制御を目指す研究が盛んに行われている。チタン酸化物には、二酸化チタンTiO_2やTi_nO_<2n-1>で表されるMagneli Phaseと呼ばれる一連の化合物があり、多彩な物性を示すが、これはポーラロン状態の多様性によっている。そこで本研究では、チタン酸化物において光照射下のポーラロンの性質を電気的・光学的手法を用いて実験的に解明することを目的とした。 二酸化チタンにはルチルとアナターゼと呼ばれる構造の異なる結晶が存在する。このうちルチルは誘電特性が調べられており量子常誘電体であることが知られているが、アナターゼの誘電性について詳しいことは分かっていない。最近、SrTiO_3等の量子常誘電体において紫外光照射による静的誘電率の増大現象が報告され、光励起された電子のポーラロン状態との関連が議論されている。アナターゼは、バンド間励起したときに生じる発光の性質(スペクトル形状や時間応答)がSrTiO_3のそれとよく似ていることから、ポーラロンも類似の性質を有していると考えられる。従ってアナターゼの誘電特性がどうなっているかは興味あるところである。そこでルチルとアナターゼの誘電特性を調べ、比較を行った。ラマンスペクトル及び静的誘電率の温度依存性の測定結果から、アナターゼは量子常誘電性を示さないことを明らかにした。ルチル・アナターゼ・SrTiO_3はいずれもTiO_6八面体を基本構造としている点で共通しているが、その配向の仕方が異なっている。このことが局所電場の大きさ、さらには誘電性に違いをもたらしていると考えられる。また、アナターゼにおいて誘導ラマン散乱を測定し、コヒーレントにフォノンを励起した場合にポーラロンの緩和過程が受ける影響について調べた。
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