本研究の目的は全く新しい発想から、遠赤外領域で稼働する「超高真空封止型顕微鏡」を開発する事である。この顕微鏡の初期設計は可視から赤外領域までの広い波長領域をカバー出来るという、他に見られない優れた性能を有するものである(「超高真空封止型」とは観測試料と共に顕微鏡の機能全てを超高真空中チャンバー内に格納し、外部からこれを操作するという全く新しい機能を備えた顕微鏡を指し、申請者が独自に発案したものである)。本研究により、固体物理の特殊目的に合致する既製品の無い遠赤外領域で初めて顕微鏡による分光実験が可能となるものである。 昨年度は基盤研究(A)(2)で開発した超高真空封止型赤外顕微鏡を構成する全ての光学部品を超高真空下の遠赤外領域で稼動するように設計変更して遠赤外領域で稼働する「超高真空封止型遠赤外顕微鏡」を設計開発した。 本年度は(1)遠赤外領域における空間分解能の測定に成功し、0.1mm^2の良好な空間分解能が達成できることを確認した。(3)して石英単結晶の破片についての顕微鏡学的な測定を行い、この物質のフォノンに特徴的な残留線バンドの反射率が精度よく測定できることを確認した。これは遠赤外領域でこの顕微鏡が所定の性能を発揮することを示すものである。以上の成果を日本物理学会(03.10岡山大学)・日本放射光学会(04.01つくば市)で発表した。
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