p型InAs基板上にMISFET(金属-絶縁体-半導体電界効果型トランジスター)試料を作製して、表面反転層のサブバンド構造と2次元電子濃度との関係を調べた.InAsでは、自然反転層が形成されるためにホールバー型の試料作成は困難であったが、本研究では、水素パッシベーション効果を利用することにより不要部分の反転層の除去を行い、ホールバー試料での電子濃度測定および移動度測定を行うことに成功した.高田らが提唱したプラズモンを媒介としたクーパー対が形成されるためには、有効質量の異なる電子が共存する状態を作る必要がある.これまでの測定から、(1)電子濃度が1.6×10^<12>cm^<-2>に達すると第二サブバンドに電子が入り出すこと、(2)Γ点近傍での非放物線状のバンド構造を反映して、第二サブバンドの面内有効質量は、第一サブバンドの面内有効質量に比べて2〜3倍小さいこと、などが明らかになった.さらに有効質量が大きく異なる電子を共存させるためにはΓ点近傍だけではなく、L点近傍にも電子を入れる必要がある.そのためには3×10^<13>cm^<-2>程度の電子濃度が必要であり、FETを用いた場合、現時点では絶縁強度はそこまで至っていない.一方、InAs表面をスパッタリングなどで「たたく」ことによって、キャリアを誘起することができる.スパッタリングで形成した絶縁膜の上にゲート電極を乗せる「ハイブリッド型試料」を用いて、高電子濃度を達成することを試みている.
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