プラズモン機構による超伝導は高密度ほど起こりやすいと考えられるため、酸化シリコンをスパッタリングによりInAs表面に堆積させて、そのときの衝撃により表面近傍にキャリアを誘起させた。このキャリアによって面抵抗が自然反転層だけがあったときよりも著しく減少がすることがわかったが、このキャリアの分布を調べるために極低温下での磁気抵抗測定を行った。2次元面に対して平行に印加した磁場に対して明瞭なシュブニコフ・ドハース振動が観測された。電子系が2次元的であれば(界面量子化されていれば)、面内磁場に対する振動は現れないはずであるので、誘起された電子系は3次元的である。また、垂直磁場下でのホール抵抗の測定から得られる面密度とあわせて解析することによって、この3次元電子の表面からの広がりが1μm程度であることが明らかになった。表面に加えられた衝撃により誘起された3次元電子は、熱処理をするとその分布を広げるとともに徐々に消滅する。消滅後は、反転層の2次元電子だけが残るが、衝撃を加える前よりは、若干、2次元キャリア密度が増加する傾向があることがわかった。今後、衝撃と熱処理の条件を変えることによって、2次元電子密度を著しく増加させることができるかもしれない。 極低温・超高真空中での劈開表面に金属を蒸着することによりInAs表面キャリアを誘起する実験も行った。今回、容易に試料や蒸着金属を変えて短時間で劈開、蒸着、測定のサイクルを行えるシステムを開発した。 予備実験において、1原子層程度の銀を蒸着すると劈開直後に100kΩ程度あった面抵抗が1kΩ程度まで減少することがわかった。
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