近年の表面観測技術の進歩により、半導体ヘテロ成長界面において種々の交差ミスフィット転位ネットワーク(CLMDs)が観測されている。しかしながら、このCLMDsの原子構造や電子状態をはじめとする微視的理解は未着手の状態である。本研究では、InAs/GaAs(111)A系において完全転位と部分転位からなる形成可能なCLMDsの原子構造と電子状態を理論的に考察している。 CLMDs原子構造の決定には経験的力場計算を用い、電子状態は半経験的強結合近似バンド計算法を用いた。 ミスフィット完全転位が一方向に繰り返し周期的成長する場合は、ヘテロ成長面内に8-4員環構造、転位線垂直面内には5-7員環構造を形成するものの、この転位芯に起因する準位はギャップ中には生じないことが明らかとなった。また(111)面の3回回転対称性のため、このミスフィット完全転位は六角形型交差ネットワークを形成することも明らかとなった。-方、ミスフィット部分転位は転位線垂直面に類似の5-7員環構造を有するものの、その5員環と7員環の結合部を形成する同族結合に起因する電子状態が不純物準位としてギャップ中に現れることが明らかとなった。
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