原子間力顕微鏡(AFM)、白金抵抗型走査熱顕微鏡(SThM)を用いて、アタクチックポリスチレン(aPS)についてクレイズ周辺のガラス転移点(T_g)の変化を調べた。クレイズ生成を伴って塑性変形したaPSにおいて、動的粘弾性測定により通常のT_gよりも低温の領域に新たな緩和モードが現れることを、AFM、SThMによる観測により、クレイズにおけるガラス転移点が局所的に低温側へ移動することを見いだした。さらに、クレイズ生成条件の違いによってもたらされる局所的な構造変化と熱特性との関係を調べ、クレイズにおけるT_gの低下はクレイズ密度が小さいほど大きくなること、またクレイズからの距離とT_gの変化の関係から、クレイズ近傍(〜10μm)では、クレイズに近づくにつれてT_gが徐々に低下していく傾向を確認した(論文投稿準備中)。 ポリエチレンテレフタレート(PET)の冷延伸過程において、クレイズの生成とネック変形と言う代表的な二つの塑性変形が続いて生じることを見出し、このPETのクレイズ領域とネック変形領域における局所熱解析の違いについての研究が進行中である。
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