研究概要 |
本研究に始まる一連の研究の最終目的は,大気圏内の巨視的力学作用が極めて長い時間スケールで果たす役割を,初めて明瞭に示すことにある.本研究の範囲では,前述のような外部条件や組成変化に対する子午面構造・循環の応答を記述する方程式を導き,(1)地球および金星の大気圏における均質圏・成層圏・対流圏の形成過程,(2)地球気候(大気・海洋循環)のインドネシア列島陸橋化に伴う変動,の2つの問題について具体的な解答を得る、というものである。 本年度は、初年度として、主として理論の構築を中心とした基礎研究を、以下のように行った. 1.基礎理論の構築と数値的研究の開始: 変換Euler平均(準Lagrange的東西平均)の大気力学方程式系を用い,平均子午面循環に関するPoisson型診断方程式1本と,地(海)上気温に関する時間発展方程式1本に直した.まず帯状方向には一様な海洋を仮定して,これに関する子午面循環の方程式を立てて連立させ,さらに時間変化項を全て落とし,いくつかの項を簡単化または省略した場合について解析的に解き,多重平衡解を得た(15年7月開催の国際測地学地球物理学連合(IUGG)総会にて発表予定). 現在,上記多重平衡解の安定性(パラメタ依存性)について理論的に考察するとともに,現実の惑星や地球の大気に当てはめて簡単な数値計算を開始し、両者を比較して考察しつつある.これらのために,計算機関係を中心とする諸費の支出を行った. 2.各惑星大気並びに古地球大気の子午面循環・気候に関する基礎調査・研究 宇宙科学研究所などにある惑星大気に関する資料を改めて調査し,また今後の惑星大気探査において本研究で対象とする子午面循環を観測するための諸方策について検討した.さらに、過去の地球大気・気候の変遷についても、地学的・非地学的な資料も含めて調査し、100〜1000年程度の時間スケールの全天日射量の変化(雲量変化、従ってこれを左右するエルニーニョ南方振動などの出現頻度に対応)に関する、初期的ではある.調査活動や論文出版のために,旅費やその他の費目を拠出した.
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