研究概要 |
本年度は氷・岩石二成分系での混合試料を作成し,衝突破壊実験を行なった.用いた氷粒子のサイズは500μm以下であり,その氷粒子に蛇紋岩粉末(数μm以下)を均等に混ぜることにより作成した.準備した混合試料の内部構造は,岩石表皮型と呼ぶべきもので,中心部に大きな氷粒子を持ち,その周囲を粉末の蛇紋岩が覆っているというものである.この単位構造を持つ試料のバルク密度を圧密により調整した.圧密はステンレス製のシリンダーに粒子状出発物質(氷・岩石混合物)を注入し,変形試験機に取り付けたピストンで,速度10〜1mm/min.の速度で圧縮することにより行なった.それにより空隙率0〜40%の試料を準備した.岩石含有率は50%と一定に保った.衝突実験は,既存の低温室に設置した一段式軽ガス銃を用いて,氷弾丸(1.5g)を150〜650m/sに加速して行なった.衝突試料(直径7cm,高さ7cmの円筒形)はアクリル製の回収箱に入れて,実験後そのサイズ分布を計測した.また,衝突の様子は,シャドウフォトグラフ光学系を用いてイメージコンバーターカメラにより撮影した.撮影速度は,10^5〜10^4コマ/秒で,露出時間は800nsである. 実験の結果,衝突クレーターから放出される破片速度の最大値は,衝突速度に比例することがわかった.すなわち最大放出速度を衝突速度で規格化した値は,ほぼ一定になる.この規格化速度(V_<e-max>/V_i)の空隙率依存性を調べてみると,空隙率(φ)の増加と伴にその速度が減少することがわかった.その関係は,V_<e-max>/V_i=-3.15φ+1.41である.回収破片のサイズ分布からは衝突破壊強度を見積もることができる.積算質量分布でその積算質量が初期質量の50%になる時の破片サイズをf_<0.5>としてエネルギー密度との相関をとると,空隙率毎に異なる関係を持つことがわかった.そこでf_<0.5>=0.5の時のエネルギー密度(Q_<0.5>^*)を衝突破壊強度として空隙率との相関を調べた.その結果,空隙率の増加と伴に強度は減少することがわかった.その関係は,Q_<0.5>^*=124(1-φ)^<2.5>である.岩石を含まない雪の場合,その衝突破壊強度は空隙率の増加と伴に大きくなることが知られているので,今回はそれとは全く反対の結果が得られた.
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