研究概要 |
「地層から当時の水理条件を復元する」ための基礎として,現世や過去の堆積物あるいは水路実験での堆積物断面を,現場で数倍から10数倍に拡大して観察し,記録する手法を確立するための研究を遂行した.堆積物の表面を自然状態で拡大して観察することにより,堆積粒子のつくりだす構造や組織から,これまで得ることができなかった新しい情報や高精度の情報を抽出することを目指した.今年度は次のような成果が得られた. 1.水路実験での粒子移動を高速で捉え,その粒子挙動を記録し,復元した.その結果,移動する粒子の姿勢と,堆積物となって記録される粒子の姿勢とは同じものが見いだせるが,その頻度分布は異なっていることがわかった. 2.水路実験で給砂量を変動した場合の堆積物の粒子配列の違いを捉えることに成功した.供給量が増えて堆積速度が増加すると,葉理構造が消え塊状構造になる.堆積速度が増加すると粒子の大きさによる分別が起こらないことが原因であることがわかった. 3.自然の地層の露頭断面で,直接,接写し拡大することで,堆積時の古流向だけでなく,堆積様式を読み取ることができた.海浜堆積物の解析結果では平行葉理の形成過程が従来の考えでは説明できないこと,波浪堆積物では側方変化が大きく,これまでの解析方法では正しい結果が得られないことなどがわかった. 来年度には,さらに精度を上げた観察・記録方法の開発を目指したい.
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