研究概要 |
本年度は,良好な堆積物試料の選定・採取,堆積物の年代解明,堆積物中から「黒い雨」降下物を発見するための方法の検討を行った. 「黒い雨」の降下地域である長崎市・諫早市・島原市を中心に,聞き取り調査を実施し,池・ダムの築造年や歴史,浚渫工事の有無やその時期を検討した.その結果,長崎市西山水源池,諫早市宗方町宗方上溜池,島原市緑町の溜池が研究に最適であることが判明した.この3箇所で柱状採泥器などを用い掘削し,それぞれ約1.5mの堆積物を採取した.各採取コアの堆積物の岩相(粒度・色調・構成物など)の鉛直的変化を記載し,粒度・構成鉱物・チャコール・C-137・Pu-239+240分析用試料を採取した.このうち西山水源池の堆積物に関しては,N型Ge半導体検出器を用いC-137法やPb法などによって年代測定を行った.また,C-137濃度の時系列変化とチャコール含有量の鉛直的変化から「黒い雨」降下物認定の可能性を検討した.この結果,すくなくとも西山水源池堆積物については,C-137とチャコール分析を併用することによって,「黒い雨」降下物の認定が可能であることを明らかにした.さらに,「黒い雨」降下物が環境へ与えた影響を知るために,微化石や重金属の分析を予察的に行った.これらの結果については,日本文化財科学会第19回大会(明治大学,東京)で発表した. この他,西山水源池堆積物については,原爆に伴う人工放射性核種の痕跡を認定するためPu-239+240分析を行い,「黒い雨」降下物との関連を検討しているところである.また,宗方上溜池と緑町の溜池に関しては,C-137とチャコール分析を行い,「黒い雨」降下物の認定を進めている.
|