研究概要 |
本年度は,天然に近い系での最上部マントル(ウェーライト・ダナイト)における組織形成の重要な支配要因を高温高圧実験によって検討した.実験はピストンシリンダー型装置を用い,1.2GPa・1100〜1200℃で行った.San Carlos産かんらん石・ネパール産透輝石単結晶の粉末を用いたもの,およびゲル合成粉末を用い,1wt%の純水を加えて焼結した.ウェーライトにおけるOl/Cpx比は9:1〜7:3の範囲で変化させた.実験時間は約1週間である.実験結果として以下のようなことがわかった。1.ダナイト-H2O系:H2O流体は三重点に分布することが多いが,流体包有物も多く形成される.これまでにもOl-玄武岩質メルト系やOl-H2O系で報告があるように,流体との界面はしばしば自形面を呈し,そのような面に囲まれた多面体様の流体プールも多く形成される.1100℃での場合,1200℃よりも流体が三重点を形成する傾向がより高かった.二面角の温度依存性と界面エネルギー極小の原理からはこれとは逆の結果が予想されるので,1100℃と1200℃でのプール形成程度の相違は岩石組織の発達程度の差による可能性が高い.2.ウェーライト-H2O系:OlとCpxの粒径が同程度の場合,H2O流体は比較的Olを好んで分布する.また,Cpxに対するOlの比が大きい場合には,実験産物内にOl粒径の不均質が生じ,細粒のOlが多い部分に流体が選択的に分布する傾向が非常に顕著である.これは界面エネルギーの粒径効果(Wark & Watson,2000)と粒界移動速度の流体量依存性の相互作用によるものと考えられる.Ol・Cpxともに自形面を呈する場合が非常に多く,またH2O流体の多くはプールを形成している.1100℃でのダナイト系とは対照的に三重点に分布するケースは非常にまれである.
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