研究概要 |
国内でも有数の米産地である秋田県の県産の米の一部のカドミウム汚染問題が報じられ,日本人の主食である米の重金属類汚染は深刻である.汚染米が発生した土地の土壌の入れ替え,カドミウム吸収剤,栽培方法変更の改善され対策の指針となるための地質学的研究である. 秋田県は黒鉱鉱床などで知られる鉱産県でもあった.土壌汚染地域はごく限られているのであるが,汚染米の風評被害を防ぎ,汚染の現状把握と,その原因究明を進めるには,地質学的,地球化学的,変質作用と関連しての鉱床学的取り組みと検討が本研究の目的である. 平成14年度の取り組み 1.米一粒一粒に指定有害物質のカドミウム,銅及び砒素の他の重金属類の量をいかに迅速かつ正確に分析するかの方法を開発する. 2.鉱床地域下流域での河川堆積物,田畑の土壌の分析とその重金属分布図の作成. 3.イネのどの部分にどの様に濃集するか,生物化学的濃縮作用の検討. 平成14年度の成果 (1)米一粒をアルゴンガスを満たした試料室に置き,直接分析する方法を開発した.レーザー・アブレーションICP-MSで極く微量成分の分析が可能であることが判明した.現在のところ約5秒でレーザービームが貫通するため10元素ほどの同時分析にとどまっている. (2)秋田県北部の太良鉱山およびその下流域で河川堆積物,土壌のサンプル採集を行った.現在,その分析を継続中である.これまでの結果ではカドミウム汚染などの重金属の濃集は見られていない. (3)イネの重金属濃縮作用の検討は,適切な協力が得られず,落ち穂などによるサンプルのみで,統計的なデータをまとめるには到っていない. 平成15年度の最重点課題 以下の重金属汚染の実情把握と汚染原因究明がある. (a)農業水の後背地としての河川水中の重金属類の含有量変化の追跡. (b)鉱床変質地域の広がりと汚染土壌地域との関連性,汚染元素の拡散に関する検討.
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