研究概要 |
ゼオライトは,ホストの構造を破壊することなく細孔に存在する陽イオンおよび水分子を自在に交換できる優れた材料特性を示す天然鉱物である.一般に,ゼオライト細孔構造は,結合性の強い約1nmほどの珪酸塩構造単位(SBU)が高次配列することによって形成されると考えられているが,本研究申請者は,天然複雑硫塩鉱物中に申請者自らその存在を確認したアンチモン系硫化物SBUも,ゼオライト類似の細孔構造を形成する可能性がある点に着目した. 本年度は,ピラミッド型SbS_3クラスターが頂点共有する鎖状構造(SBU)を基本としている天然鉱物andohriteシリーズ鉱物群の解析を中心に行った.Romania, Mures, Baita鉱山産ramdohrite(n=2;P2_1/n,a=19.338(1),b=12.735(1),c=8.745(1)Å,β=90.03(1)°)、およびBolivia, San Jose, Orura鉱山産quatrandohite(n=4;P2_1/c,a=19.169(2),b=17.160(3),c=13.042(2)Å,β=90.01(1)°)の解析を行い,天然andohriteに共通なSbS_3構造要素とSBU構造単位としてのSb_8S_<16> chainの存在を確認することができた. また,有機鋳型物質を添加した水熱合成によってSbS_3構造要素から構成される,新規なマイクロポーラスアンチモン化合物の合成も行った.本年度の系統的実験から,(1)目的とする新規化合物はNa_2SおよびH_2Sなどを合成系に添加した,Sb_2S_3組成よりSが過剰な場合のみに選択的に合成できること(2)1,2-aminoethylpiperadine1,4-diaminobutaneおよびethylenediamineなど,立体的にほぼ同じおおきさの2価の有機アミン鋳型の存在で,類似の骨格構造を有するアンチモン硫化物鎖状構造が育成できること,が明確になった.来年度は,さらに系統的なソルボサーマル法を駆使して,アンチモン系硫化物SBUを高次配列した新奇な硫化物ゼオライト類似鉱物を合成するし,その構造形成原理を解明する予定である.
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