研究概要 |
(1)東南極ナビア岩体やリュッツオホルム岩体の泥質岩起源のグラニュライトについて7キロバールから15キロバールの圧力のもとで,850℃から1200℃の温度条件で,相平衡実験を行った.これらの岩石は,含水鉱物である黒雲母をモードで10%程度含んでいるが,7キロバールでは1050℃,9キロバールでは1100℃,11キロバールでは1150℃以下の温度ではメルトを生じなかった.温度上昇に伴い,斜方輝石+黒雲母+ルチル+スピネル+サフィリン+カリ長石,斜方輝石+黒雲母+ルチル+サフィリン+スピネル+メルト,斜方輝石+黒雲母+ルチル+スピネル+メルトへと共存する相の組み合わせが変化し,黒雲母は1150℃の温度条件でも存在していた.これらグラニュライトの相平衡関係の実験的研究については現在印刷中および投稿中である.また,研究成果の一部は第9回国際南極地学シンポジウム(ポツダム)で公表した. (2)愛媛県伊豫市で採取した泥岩礫とオーストリア,カーニックアルプスで採取したデボン紀の泥岩について,総化学組成分析を行い,8キロバールの圧力で無水条件のもとで,800℃,850℃,900℃で相平衡実験を行った.実験時間は2週間から1ヶ月とした.現在,8キロバール950℃での実験が進行中である.これらの泥岩では含水鉱物を含んでいるにもかかわらず(含水量は2wt%前後である),850℃でメルトを生じなかった.泥質岩起源のグラニュライトの実験結果と同様に,溶融開始温度が通常考えられている温度(700℃から800℃)よりもかなり高い可能性が示唆される.
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