研究概要 |
オーストリア,カーニック・アルプスで採取した泥岩について,8キロバールから14キロバールまでの圧力範囲で,700℃から1150℃までの温度範囲で,256時間から407時間の保持時間で高温高圧実験を行った.8キロバール700℃で菫青石+黒雲母+カリ長石+曹長石+石英+ルチル+チタノマグネタイト+気相の組み合わせ安定であった.この組み合わせのうち,8キロバール800℃で黒雲母と曹長石が消滅し,新にスピネルとメルトが出現した.このことは,8キロバールでは,700℃と800℃の間の温度で,溶融を開始することを示している.8キロバール900℃ではカリ長石が消滅し自形のコランダムが出現した.この新に出現したコランダムは自形の石英結晶と直接しており,この条件では,スピネル+コランダム+石英が安定で,サフィリン+珪線石が不安定であることを示唆している.また,9キロバール1050℃では,超高温変成岩類に普遍的に観察される鉱物組み合わせである斜方輝石+菫青石+サフィリン+スピネル+珪線石+石英とメルトが出現した.このメルトは花崗岩質の組成を有していた.この事は,沈み込むプレートで地下深所にもたらされた泥岩もしくは泥質岩が地殻下部の条件で,部分溶融することにより,安山岩質マグマよりもむしろ花崗岩質マグマが発生し,地殼下部に超高温変成岩類を溶融残存物として貯蓄していく可能性を示唆している.14キロバール1150℃の条件では,リキダス相としてコランダムが出現しメルト+気相と共生していた.このメルトの組成は安山岩質であった.この事から,泥岩や泥質岩の溶融の度合い違いにより,花崗岩質マグマから安山岩質マグマへの多様なマグマが発生する可能性を示唆している.
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