ナミビア北部に分布している先カンブリア紀後期の炭酸塩岩層はスノーボール・アース仮説を生んだ舞台である。すでに多くの研究者達がこの地層の地質学的研究を展開し、また炭素同位体やストロンチウム同位体などを用いて当時の環境復元の試みが為されている。我々は2001年から発足した海外学術調査:基盤研究(B)「ナミビアの縞状炭酸塩岩を用いたスノーボール・アース仮説の検認研究代表者:川上紳一)に参加し、2001、2002年度の野外調査によって大量の試料を採集することができた。 現在、炭酸塩岩の鉛同位体による放射年代測定とストロンチウム同位体測定が進行中である。炭酸塩岩中の極微量の鉛抽出には大きな技術的困難が伴うが、すでにこの点を克服することができた。このため世界でも第一級の良質のデータを得ることが可能になっている。2003年中には信頼性の高い鉛アイソクロンによる年代が報告できる見込みである。ストロンチウム同位体測定とともに、微量元素の定量による環境復元の試みを行っている。そのためにマルチコレクターICP質量分析計による希土類元素の定量のルチンワークを目指している。 また2002年にはナミビア南部のエディアカラ化石群の大量の試料を採集することができた。ナミビア地質調査所との共同研究が進行中である。本試料は地球生物史を考える上に重要なものであり、この年代測定にも着手する。
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