2002年7月、可児智美は南アフリカ共和国ヨハネスバーグで開催された国際堆積学会に出席し、このエクスカーション(ナミビア北部のスノーボール・アース仮説がうまれたフィールド)にも参加し、この分野をリードしているハーバード大学のポール・ホフマン教授と面識を得た。 また同年、能田成と可児智美は7月から8月には科学研究費・基盤研究(B)(海外学術調査)補助金の支援により、ナミビア北部地域において、野外調査と分析用試料の蒐集をおこなった。この計画は岐阜大学・川上紳一助教授を研究代表者とし、京都大学・大野照文、熊本大学・能田成らを研究分担者とするものである。この調査では、とくにエディアカラ動物化石群を産出すると目されていた露頭において、大量の化石を発見し、研究の新たな展望が開けた。 年代測定においては、ロシア・ゴルニアルタイ地域のBaratal石灰岩についての鉛-鉛放射年代測定を行い、598±25Maという値を確立できた。この値は所謂、スノーボール・アース期の末期とされている年代に相当する。この年代は注目すべきものである。中国南部・Doushantuo地域ではエディアカラ動物群に酷似した化石群の産出が近年注目されているが、その放射年代が600Maと我々が得た年代と誤差の範囲内で一致しているのである。この事実はこの時代にスノーボール・アースが存在したかどうかを判別する上で、極めて重要な制約を与えることになる。Doushantuo地域の化石群が直接エディアカラ動物群へと進化したのであれば、その進化が起こったとき、全地球が氷に覆われていたとは考えにくいのである。したがって私達が確立できたと考えているBaratal石灰岩の598±25Maという年代についても追試が必要であり、またナミビアの炭酸塩岩についても信頼度の高い年代測定が急がれる所以である。
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