今年度は、基本骨格であるフラーレンダイマーのESRによる詳しい解析とフラーレンダイマー・トリマー、その他の分子の合成を試みた。結果は、以下の通りである。 1.フラーレン環を直接繋いだダイマー(C_<120>)と酸素原子が一つ入ったダイマー(C_<120>O)について、励起三重項状態のESR信号を観測して、モノマー(C_<60>)との比較を行なった。スペクトルの解析から、2つのダイマーとも、励起は95%以上一方の環に局在化していることが分かった。これにより、2つのフラーレンダイマーは本研究に適合する分子であることがわかった。 2.モノマーと同様な方法を用いて、これらのフラーレンダイマーへのラジカルの付加を試みた。しかし、もともとダイマーの量が少なく、現在までに元素分析やESR実験に必要な量(2mg)のラジカル付加のダイマー分子が合成できていない。今後、収率の良い合成方法を新たに開発する必要がある。フラーレン三量体については、光反応が起こりやすく不安定であり、光物理の研究には向いていないようである。 3.新たな分子系として、我々の研究室で三重項・ラジカル対の研究が進んでいるポルフィリン-ラジカル系とフタロシアニンラジカル系のダイマーの合成をスタートさせた。反磁性金属で2つの環を結合する方法で、この方法は以前に励起二量体のESR研究に用いていた方法である。現在、これらの分子系の合成に集中している。
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