研究概要 |
本年度は第一に水のサイズを自由,連続的に変化させられる薄膜水の測定装置をRefineすることとした.圧電アクチュエータを用いたナノメートルまでの膜厚制御性を有する測定装置を試作して実験に供した.その結果,マイクロメータなどによる純機械的な方法に比べて,水サイズの設定再現性と均一性を大幅に向上させることができ,より信頼性の高い測定データを得ることができるようになった. また,薄膜水に直流電界を印加できる機構を付加して,直流電界印加時における水クラスタ構造を測定することとした.海外共同研究者の一人,イギリス・ケンブリッジ大学・化学科のPaul Davies教授との議論によると,倍音測定に見られる非線形性が生じているとすれば,スペクトルシフトとして観測されるのではなく,スペクトルの広がりとして観測されるはずであると指摘されていたが,電界印加状態における測定・解析を進めた結果,分子間水素結合個数が0個の単分子状態の水分子種による吸収スペクトル強度の顕著な増大が観測された.これは薄膜化によってすでに単分子状態の水分子種が増加していて,それが直流電界によって分子の配向が制御され,近赤外光の電界の向きと一致したためと解釈されることから,Davies教授の指摘のとおり,われわれが観測している薄膜水・毛管水における単分子状態の水分子種の増加は倍音測定に見られる非線形性によるものではなく,また一部の研究者から指摘を受けた超純水の不純物によるものではなく,現実に生じているものであることを実験的に補強する結果が得られた. 平成16年1月に行ったイギリスとフランスへの海外共同研究者との議論のための海外出張では,各研究機関の研究者との議論,研究活動では以上の議論をさらに補強する議論,計算が行われ,それらの結果は現在論文としてまとめるための準備中である.また,本年度はかねてから日本の商社を介してロシアの半導体レーザ開発会社と進めてきたこの波長域での広帯域高強度半導体発光素子(Super Luminescent Diode)の開発に成功したので,さらに薄膜化・毛管化を進めた実験に取り組む予定である.
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