研究概要 |
本研究の目的は、より高い三次、四次の非線形光学過程を用い、赤外プローブを用いないあらたな表面振動分光法の開発を目指した基礎研究を行う。一般に非線形光学過程の確率は次数の増大に伴い小さくなっていく、このため実際にこのような光学過程が分光手法として使用に耐ええるかは、未知である。この点の確認が研究の主たる目標である。 可視光のみを使用したラマン遷移を伴う、四次の非線形感受率X(4)(ω_1-ω_2+2ω_3,ω_1,ω_2,ω_3)を利用した四次の非線形光学過程が、表面振動分光の手段として利用可能であるかを検討する。この光学過程には、次の2つのパターンのプローブ光の使用が考えられる。 (1)ω_1、ω_2、ω_3すべて時間幅約フェムト秒の光を用いる。 (2)ω_1、ω_2は時間幅約フェムト秒の光を用い、ω_3として時間幅が数ピコ秒、周波数幅が数cm^<-1>の光を用いる。 プローブ法(1)の場合は、全てのプローブ光の尖頭出力が高く、高次の非線形光学過程の観測に有利である。しかし一方、周波数分解能が時間幅で制限される。プローブ法(2)の場合はω_3光の周波数幅が狭いため周波数分解能が優れているが、ω_3の時間幅がピコ秒であるため、使用できる尖頭出力が(1)よりも低い値に制限される可能性がある。つまり四次の信号が観測可能であるかを確認するという観点では、やや不利な選択である。以上の得失を鑑み、平成14年度は信号検出という点で優れたプローブ法(1)に関してレーザーシステム(時間幅、波長)、および検出方法(ホモダインおよびヘテロダイン)などに関して検討し測定システムの設計を行った。平成15年度に設計に従いシステムを実装し、四次の信号の検出を試みる。
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