本研究の目的は、四次の非線形光学過程を用い、赤外プローブを用いないあらたな表面振動分光法の開発を目指した基礎研究を行う。一般に非線形光学過程の確率は次数の増大に伴い小さくなっていく、このため実際にこのような光学過程が分光手法として使用に耐ええるかは、未知である。この点の確認が研究の主たる目標である。 上記の目標を実現するため、16フェムト秒の波長可変光源を用いた四次の非線形分光用の測定装置を作製した。この装置を用い、プローブ光として可視光のみを用いる界面選択的な振動スペクトルの測定に成功した。以下に測定の概略を述べる。 四次の非線形光学測定は、極短パルスを使用したポンプ-プローブ法の配置で行った。時間遅延を制御しながら、ポンプ光とプローブ光を試料面に照射し、プローブ光から発生する倍波(紫外光)強度を遅延時間の関数として測定する。倍波強度は、界面の分子振動を反映した振動構造を有するので、これをフーリエ変換することによって界面の振動スペクトルが得られる。この測定原理にしたがい、ポンプ光およびプローブ光としては時間幅16フェムト秒波長600nmの光を用い、試験測定用の試料としてオキザジン色素水溶液の表面を用いた。その結果、0〜700cm-1の領域の水溶液の表面の色素のスペクトルを、得ることができた。これは、四次光学過程を用いた界面選択的な手法による、世界初の界面の分子の振動スペクトルの測定である。今後この手法の適用範囲をさらに拡大するための研究を継続する予定である。
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