研究概要 |
dmit (=2-thioxo-1,3-dithiole-4,5-dithiolate)のニッケル錯体[Ni(dmit)_2]とDABCO (=1,4-diaza-bicyclo[2,2,2]octane)に長鎖アルキル基を付けたカチオンとの塩では、アルキル鎖長が偶数の場合と奇数の場合で結晶の色が異なる偶奇性が見出されていた。本年度の研究では、さらにピリジン系カチオンでも同様の現象が見出された。このような現象が起こる理由を解析するために、X線構造解析を行い、結晶中の会合構造を解析した。 粉末X線回折から、偶数の場合と奇数の場合とで結晶構造が異なっていることが判明した。そこで、アルキル鎖長が奇数であるC_7から得られた結晶のX線構造解析を行ったところ、二核錯体の(C_7DABCO)_2{tto[Ni(dmit)]_2}(tto=Tetrathiooxalate, C_2S_4^2)が生成していることを確認した。二核アニオンはほぼ平面構造であり、分子内に広く共役したπ電子系を持つが、他のdmit錯体で見られる分子間S-S相互作用は確認できなかった。アルキル鎖長が奇数の場合でも、元素分析からは単核の錯体であることが分かっているので、結晶化の過程でdmitが一部分解し、結晶性のよい二核錯体が結晶化したものと考えられる。一方、X線構造解析用には小さ過ぎる結晶を核として利用したところ、アルキル鎖長が偶数のC_<10>の錯塩については単結晶を得ることができた。この場合は単核錯体の(C_<10>-DABCO)_2[Ni(dmit)_2]であった。偶奇性の解明にはアルキル鎖長が奇数である錯塩の結晶構造解析が必要であるので、さらにdmitの分解を抑制する条件にて結晶の育成を行う予定である。なお、ピリジン系についてもいくつかの鎖長についてX線構造解析に成功している。
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