研究概要 |
本年度は、種々の強誘電体結晶を用い、分極特性、光起電力特性およびそれらの光波長依存性を調べ、強誘電体結晶の異常光起電力効果を明らかにすることを行った。さらに、Ptを薄膜で担持した強誘電体について水の分解反応に対する光触媒活性を測定した。強誘電体結晶として、自発分極軸が表面に垂直なチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O_3)多結晶、および、自発分極軸が表面に垂直、傾斜(128°)および平行なニオブ酸リチウム(LINbO_3)単結晶を用いた。抵抗加熱法により結晶両面に金電極を薄膜として蒸着したのち、購入光源装置(浜松ホトニクスL5662-02)により光照射し、単分域構造試料の光起電圧および光起電流を測定した。自発分極軸が表面に平行な場合には、光起電流は全く観測されないのに対し、垂直および垂直成分を持つ強誘電体結晶では、光定常起電流が観測され、電流方向は自発分極軸の方向に揃うこと、およびチタン酸鉛に発生する光起電流は、ニオブ酸リチウム結晶に比べ数十倍も高い値を与える(また光起電圧もチタン酸鉛の場合に250倍も高い値となる)ことが示された。キュリー温度以上の高温で加熱処理し、単分域構造から多分域構造への変換を起こさせたチタン酸鉛では、光起電流は観測されなかった。以上の結果より、異常光起電力効果は、自発分極軸の方向に依存すること、および、半導性が高いチタン酸鉛が大きい異常光起電力効果を持つことが示された。光の波長を変えた場合に、チタン酸鉛の異常光起電力発生の波長依存性は、光吸収スペクトルとよく一致した。水の分解反応に対する光触媒活性は、ニオブ酸リチウム結晶では、水素生成活性が見られないのに対し、チタン酸鉛では、水素生成活性を持つこと、その活性は分極軸方向に依存すること、および多分域構造の場合に光触媒活性は消失したことから、異常起電力効果が光触媒活性と密接に関連することが見いだされた。
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