研究課題
最近我々は、酸化チタン(チタニア)が溶液化学的合成手法を用いることでテンプレートなどを一切使わずに直径数nmのチューブ構造を自己組織化的に形成することを世界で初めて確認した。様々な物性を持つ酸化物がナノスケールの特異なチューブ構造を持つことは、ナノ表面や内部のナノスペースを用いた多機能材料として様々な可能性を持つことを示している。そこで本研究ではチタニアナノチューブの合成プロセスを検討すると共に、ナノ表面や内部ナノスペースの特徴と材料固有の物性を共生させた高次機能材料としての可能性を検討した。その結果、異なる出発原料や合成条件を変化させた場合でも、直径8〜10nm、内径5〜8nmのナノチューブが生成することを確認した。電子顕微鏡解析から、アナターゼを基本骨格とし、その(010)方向がナノチューブ長手方向に配向していることを見いだし、これを基に構造モデルを構築してシミュレーションを行い、電子顕微鏡解析結果との整合性を確認した。また、合成条件により光学的バンドギャップが変化すること、処理条件に応じて熱的な安定性が変化することを見いだした。得られた材料の光触媒特性を評価したところ、水の光分解反応における水素発生能力が市販のチタニア光触媒より2倍程度高いことが明らかとなり、構造由来の機能発現を確認した。また、ソノケミカルプロセスを用いてPdナノ金属をチタニアナノチューブに坦持させると更に向上することを確認した。一方、本材料はナノサイズを持つばかりでなく、チューブ内のナノスペースの存在により種々の物質の吸脱着能が期待された。そこで、Liイオンの挿入脱離挙動を電気化学的に測定したところ、本材料は一般的な高比表面積チタニア粉末と比較して極めて高い可逆的挿入脱離挙動を示すことを確認し、特異な構造と1次元ナノスペースに由来するバッテリー電極などへ応用できる高次機能化が可能なことを確認した。
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機能材料 23・4
ページ: 47-56
Selected Papers of Shanghai International Nanotechnology Cooperation Symposium 2002, (Shanghai, China, July 30-Aug.1, 2002)
ページ: 138