研究概要 |
金コロイドは機能性ナノ材料として最近特に注目を集めている。この研究では金コロイドを自己組織化法により修飾し,ポリスチレンやガラス基盤上に吸着させた薄膜の電気的特性について検討を行い,分析化学的応用を考えた。集合膜の導電性は,コロイドを修飾するときのチオール濃度に依存し,最小値を持った。すなわち,最小値よりも濃度が高くても低くても絶縁性を帯びた。また,この最小値の電気抵抗はチオールの分子鎖長により変化し,長いチオールほど電気抵抗は大きくなった。とくにポリスチレンなどのプラスチック基板上に金コロイドを吸着させたときは非常に強固な金薄膜が生成した。 このようにして,用いるチオールの種類,濃度をパラメータとして変化させることにより,膜の電気抵抗を金属領域から絶縁体領域まで制御することができた。この現象を利用すれば,対象分子の長さを関数とする分子スイッチができると考えられ,またセンサーに応用することが可能である。すなわち本法は,光学的,電気化学的な機器,操作を含まなくても,電気抵抗を測定するだけで簡単に対象とする物質のセンシングが可能となる画期的な手法となる可能性がある。実際にチオール濃度のセンサーとしてこの集合膜は機能する。この様な原理をさらに発展させ,DNAなどのセンシングに応用し,12塩基DNAの内,1塩基ミスマッチであってもきわめて明快な変化が得られ,DNAチップとして応用可能なことが分かった。
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