両生類以下の脊椎動物では、成体でも失われた四肢が再生する。これはいかなる分子メカニズムによって達成されているのであろうか?また、無尾両生類以降の脊椎動物で再生が起きないのはなぜであろうか?この疑問に答えるために、再生開始を指令するようなシグナル伝達機構を、遺伝学的なアプローチによって明らかにできないかと考えた。本研究では、近年遺伝学的なアプローチが可能な脊椎動物として注目されてきたゼブラフィッシュを用いて、再生の開始機構を失ったような変異体のパイロットスクリーニングを行った。 ゼブラフィッシュは1ヶ月以内には成体の体制が完成し、そのヒレ再生は成体で1週間ほどで起こる。ヒレ再生は容易に大量に行うことのできる優れたスクリーニング法である。さらに効率よく遺伝学的なスクリーニングを行うために、再生が3日程度で完了する幼生を用いたアッセイ系の確立を行った。再生芽のマーカーとされる遺伝子の発現や細胞の増殖を調査したところ、成長が続いている幼生でも、成魚と同じmsx遺伝子の活性化や細胞増殖の"超"活性化が観察され、正常な成長と同時に、成魚と類似した機構で再生が起こっているらしいことが明らかになった。 すでにゼブラフィッシュで確立しているENU(エチルニトロソウレア)を用いた方法で変異を導入し、定法に従ってF1世代の作製を行った。これらの雌から半数体を作成し、変異体のパイロットスクリーニングを行った。100匹のF1雌についてスクリーニングを行ったところ、14について再生に異常が観察された。半数体は長く生存せず表現型も乱れるが、このうち半数は良い候補と見られる。今後、2倍体での表現型の確認と系統の確立を目指す。
|