研究概要 |
1、ブロモウリジン(BrU)を用いた新生RNA鎖の標識およびcDNAライブラリの作成 遺伝子発現の経時的変化を簡便に解析する方法の確立を目的として、新生RNA鎖の選択的な標識と分離に重点を置きながら研究を行った。熱処理により特定の転写反応を活性化(不活性化)した培養細胞をBrU存在下で短時間培養し、新生RNA鎖だけをBr標識した。細胞よりRNAを調製し、Br-RNAを抗Br抗体とそれに対する2次抗体が結合したマイクロビーズで分離した。現在、これらの調整RNAを材料にcDNAライブラリの構築を行っている。 2、カイコESTデータベースを用いた遺伝子発現プロファイルの解析 カイコの異なる組織あるいは異なる発生段階由来の16種類のcDNAライブラリより構築されたESTデータベースを用いて、αチューブリンとβチューブリン遺伝子ファミリーの発生段階における特徴的な発現パターンを明らかにした。αチューブリン遺伝子では、BMTUA1が多くの器官で発現しており、BMTUA2は脳で、またBMTUA3は精巣で特異的な発現が認められた。βチューブリン遺伝子では、BMTUB1,2の発現が多くの器官で認められたが、器官、ステージでの変動もみられた。BMTUB3は翅原基で、BMTUB4は精巣で特異的に発現していた。これらの結果から、多くの器官でBMTUA1はBMTUB1,2とヘテロダイマーを形成すること、BMTUA3とBMTUB4は精巣で特異的なヘテロダイマーを形成することが推定された。翅原基では発生段階により、発現するβチューブリン遺伝子に変化がみられ、変態期の形態形成過程の微小管構築において、異なるペアによるチューブリンヘテロダイマーの関与が示唆された。 3、温度感受性変異株を用いた転写反応の解析 遺伝子発現の基本的な反応機序を理解するために、RNAポリメラーゼIIの温度感受性変異株を用いて、機能的な緑色蛍光タンパク質GFPを結合したRNAポリメラーゼIIを安定に発現する哺乳類培養細胞株を樹立し、生細胞中で基本転写の速度論的な解析を行った。
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