まずブルードないしクラッチの性比のデータを具体的な例としてとりあげ不等分散の影響を検討した。ブルードやクラッチの性比は多くの例で二項分布の仮定に基づき分析されている。そこで不等分散としてはいわゆるoverdispersionやunderdispersionの形で起こるとすることができる。ブルードやクラッチの性比データの特徴を検討した結果、通常はあまりみられないunder-dispersionが見られることとoverdispersionやunderdispersionの程度がクラッチやブルードのサイズに依存して変化することの2点があることが明らかになった。したがって、離散的なデータのover-dispersion対策としてこれまで使われたきた方法では、不充分な場合が多く対応しきれないと考えられる。実際の性比調節で想定されているケースをもとにしたモンテカルロシミュレーションによっても、そのことが裏づけられた。 次に変数変換について検討した。変数変換はパラメトリックな統計的方法を使用する際にその前提条件の確保のために広く使われているが、生態的データにおける生存や個体数などの個別の適用分野をみると不適切な使用例が多い。変数変換してパラメトリックな統計的方法を適用すると、独立変数が複数存在する場合に、一般的に大きな推定のかたよりなどを生じる状況が多数存在することが明らかとなった。このかたよりは、一部が誤差構造に関するものだったが、期待値に関するものも存在した。期待値に関する効果のために、数値計算によって検討したところ、標本数を大きくすることではかたよりの解消にはならずにかえってかたよりを大きくする場合が見られた。
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