移入種であるコカナダモは日本各地に分布し、各生育地によって個体群の繁茂衰退傾向が異なることが報告されている。その原因として各生育地の環境要因の違いが考えられているが、一方で、日本では栄養繁殖のみにて増殖を行っているため、個体の持つ内在性の生育ポテンシャルの違いも一つの要因として挙げることができる。そこで、内在性ポテンシャルの一つの指標となるテロメア長を日本各地より採取したコカナダモで測定し比較することにより、各生育地における個体群の衰退とテロメア長との間に相関があるのかどうかについて検討した。前年度はコカナダモからの純度の高いDNA調整法及びテロメア長の測定方法の開発を行った。平成16年度は、日本各地(15カ所)から採取したコカナダモよりゲノムDNAを調整し、この制限酵素を用いてテロメア長の測定、比較を行った。その結果、尾瀬沼、琵琶湖南湖、米子水鳥公園及び猪苗代湖のサンプルにおけるテロメア長が他の地点に比べて有為に短くなっていることが明らかになった。さらに、テロメア長が短くなっていることが確認された尾瀬沼、琵琶湖南湖、米子水鳥公園について個体再生産性実験を行ったサンプルから主茎及び切れ藻におけるテロメア長の比較を行った。その結果、尾瀬沼のサンプルでは両者のテロメア長に変化は見られなかったが、琵琶湖南湖、米子水鳥公園のサンプルでは主茎で短くなっていたテロメア長が切れ藻では長く回復していることが明らかになった。個体再生産実験の結果、尾瀬沼のサンプルには主茎伸長型個体が主に含まれ、琵琶湖、米子水鳥公園のサンプルは側茎の生産数が多く見られる分枝多産型の繁殖様式を示すことが明らかになった。したがって、本研究により主茎伸張型のサンプルでは切れ藻によるテロメア長の回復は見られず、分枝多産型のサンプルでは切れ藻によりテロメア長の回復が見られる事が示された。
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