研究概要 |
植物のグルタミン合成酵素(GOGAT)反応に、炭素骨格である2-オキソグルタル酸(2-OG)を供給する経路は明らかにされていない。本研究では、その可能性のある3つの酵素(ミトコンドリアNADイソクエン酸脱水素酵素,IDH;サイトゾルNADPイソクエン酸脱水素酵素,ICDH;ミトコンドリアNADグルタミン酸脱水素酵素,GDH)に着目し、本年度は分子生理学的な解析に必要な分子資材の獲得、遺伝子発現、並びに免疫組織学的解析を中心に研究を進めた。 タバコIDH遺伝子の情報をもとにデータベース(TIGR)を用いて検索し、触媒サブユニットと推定されるイネIDHaと調節サブユニットと推定されるIDHb、cのゲノム、cDNAをPCR法により単離した。第10未抽出葉身、完全展開後0〜42日目の葉身と、開花後0〜40日目までの穎果を経時的に収穫し、ICDH、IDHの活性タンパク質含量の推移について解析した。新鮮重あたりのICDH活性とタンパク質含量は、葉身では未抽出葉身、完全展開直後に、穎果では開花後10〜15日目に高い傾向を示した。IDH活性は、ICDH活性に比べ、常に低い値を示し、IDHaタンパク質含量は成長・老化に伴って増加する傾向を示した。未抽出葉身、登熟過程の穎果で、ICDH1、IDHaタンパク質は、ともに師管や導管から物質が輸送される経路に相当する維管束組織柔細胞群に主に局在していた。これらの結果より、ICDH、IDHの両酵素ともNADH-GOGATへの2-OG生成が可能であることが示唆された。GDHは、師部伴細胞に強いシグナルが認められた。来年度は、遺伝子破壊系統の応用や、さらに詳細な発現解析を行い、窒素と炭素代謝のクロストーク機構を研究する予定である。
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