藍藻(シアノバクテリア)は、光応答性遺伝子発現調節機構を解析する為の優れたモデル生物である。研究代表者は、藍藻の光応答性遺伝子psbAの発現に注目し、核酸の分子構造[湾曲DNA/プロモーター/5'非翻訳領域シス配列(5'-UTR)]の転写・転写後調節に与える影響や転写装置であるRNAポリメラーゼの機能解析を進めている(別紙発表論文)。その一環として本研究課題では、psbA遺伝子の5'-UTRに普遍的に存在するAU-box配列を特異的に認識して切断する新規エンド型リボヌクレアーゼ(RNase)を藍藻Synechocystis sp. strain PCC6803株から同定し、その切断特異性を検証した。初年度にあたる平成14年度では、既に全ゲノム配列が決定されている6803株のデータベースから、エンド型RNaseの候補としてRNase Eを選抜した。RNase E遺伝子を発現ベクターにクローン化後、大腸菌の中で大量発現させ、産物の精製に成功した。得られた精製RNase EとAU-box配列を含んだ短鎖のpsbA2 mRNAをin vitro系で混合し、高濃度ポリアクリルアミドゲル電気泳動法にて切断箇所を1nucleotideの解像度で解析した。その結果、予想通り、RNase Eはエンド型(mRNA鎖の内部から切断)のAU-box配列部位特異的切断活性を有していることを初めて明らかにした。また、AU-boxをGC-richな配列に置換したGC-box mRNAを設け、RNase Eによる切断が起こらない事を確認した。更にPCC6803株と近種のMicrocystisaeruginosa K-81株psbA2 AU-boxに対する6803 RNase Eの切断機能を調べ、同様の切断活性を確認した。一方、in vivoにおけるRNase Eの機能を検証する為、6803株RNase E遺伝子破棄株を取得しようとしたが、生育に必須な遺伝子である為か、うまくいかなかった。そこでRNase Eを大量発現する6803株を現在構築中である。また申請書に基づき、次年度RNase E変異体実験に使用予定の菌体培養装置を購入設置し、培養条件なども検討中である。
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