研究概要 |
光合成微生物である藍藻(Cyanobacteria)は、光応答性遺伝子発現調節機構を解析する為の優れたモデル生物である。研究代表者は、藍藻の光応答性遺伝子psbAの光応答性発現に着目し、核酸の分子構造[湾曲DNA/プロモーター/5'非翻訳領域シス配列(5'-UTR)]の転写・転写後調節に与える影響や転写装置RNAポリメラーゼのシグマ因子の機能解析を進めている(別紙発表論文)。 その一環として本研究課題では、psbA遺伝子の5'-UTRに普遍的に存在するAU-box配列(UAAAUAAAモチーフ)を特異的に認識して切断する新規エンド型リボヌクレアーゼ(RNaseE)を藍藻Synechocys tis sp. strain PCC6803株から同定した。更に、切断特異性を精製RNase Eタンパク質を用いたin vitro実験系で明らかにした。RNase Eタンパク質は、暗黒条件下でAU-boxを切断し、psbA mRNAの安定性を低下させると予測されたので、これを細胞内(in vivo)で検証しようと、6803株RNase E遺伝子破棄株の取得を目指したが、生育に必須な遺伝子であるためか成功しなかった。そこで2年目(最終年度)にあたる平成15年度では、RNase E遺伝子を6803株内で高発現させることが可能なベクターを構築し、形質転換株取得を目指した。候補となる薬剤耐性株を得て、現在psbA遺伝子のAU-box配列に与える影響を解析中である。これら成果の一部は、スペイン・バルセロナで開かれた第7回国際植物分子生物学会(June 23-28,2003)で発表した(SO5-76,要旨集p89)。以上のデータとin vivoの成果を踏まえ、現在投稿論文作成準備中である。更に本研究課題で得られた成果も含め、これまでの研究業績に対して平成16年度日本農芸化学会奨励賞を受賞。受賞講演要旨集(p331-333)の中で「光合成微生物の光誘導性遺伝子発現調節機構:転写・後転写に関与するシス配列とトランス因子」として成果を公表した。
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